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(1)自称天才タケ君

 身長185cmのタケ君の素潜りデビューは葉山。フィンをつけると2.3Mになり、腕を伸ばすと体長3Mほどの怪物になる。この怪物くん、最初は3点セットに馴染めずアップアップの連続で、冗談かと思うほど下手な素潜りを見せてくれた。人生最初の素潜り記録は「2.1M」。逆立ちしてももっと深い。後日、人生二度目の記録は身長以下の「1.8M」。どうすればそこまでしか潜れないのか理解に苦しんだ。

「君は、素潜りに向いてないのかもね」
「いや、先生、ちがくてちがくて、素潜りが僕のほうを向いてないんですよ、きっと」
「言い訳なんかどうでもいいけど、『ちがくて』禁止っていつも言ってるだろ!子供じゃあるまいし」

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 1997年7月、はる姉さん、とみちえさんとスクーバ同期のタケ君は、この日が3回目の素潜り。面倒なのでウェットスーツもウェイトも無し。水温19度でスーツ無しの素潜りなどドライスーツ派からすれば狂気の沙汰だが、この日の気温は36度あり、潜りやすい水質なら短時間の素潜りに支障はない。最初こそ「冷てえええええ!」と騒いでいたタケ君だが、30秒もすると「あれ?何ともない」という具合。
 もともと海で潜ったことのない彼は「海は怖いもの」という先入観があった。また、プール講習で目や鼻が痛くなるのだから、海の水はさぞかし「塩辛くて」「目にしみる」「気持ち悪いもの」と想像していた。そんな彼だが..。
「全然冷たくなかったです」
「素潜りはすごく気持ちよかったです」
「海の中って、怖くないんですね」
「海水は、プールより人に優しいってことがよく分かりました」
「今度、素潜りだけもっとたくさんやってみたいです」


 ついでにお調子者の彼が私のログブックに書いた感想は、
「海は友達。素潜り3回目にしてその極意に触れるあたり、まさに天才。自分の才能が怖い!」
 唖然呆然。天才かどうかは疑問だが、普段教えている変なコツは段々理解してきたようだ。もう少し謙虚なら申し分ないが、よっぽど嬉しかったのだろう。しばらくは大目に見て、そのうち天才ぶりを遺憾なく発揮してもらおう。これがタケ伝説の始まりでもあった。


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